売り場で「浅煎り」「中煎り」「深煎り」の袋が並んでいたら、いま飲みたいのはどの方向でしょうか。明るい酸味や果実・花を思わせる香りへ進みたいのか、苦味や香ばしいロースト感を深めたいのか。どちらにも寄せすぎたくなければ、中間から始められます。

焙煎度は、いまの豆から味を変えたいときの手がかりです。同じ「中煎り」でも、お店によって位置づけは違います。まずは今飲んでいる豆を基準に、浅めと深めのどちらへ進みたいかを考えてみましょう。

無地のコーヒー袋と、三つの器に分けた無銘柄の焙煎豆
三つの器は選択の方向を表す生成イメージです。実在商品や、焙煎度の標準色を示すものではありません。

酸味を軽くしたいのか、苦味を深めたいのか

UCCの焙煎解説では、一般に浅く煎るほど酸味を、深く煎るほど苦味を強く感じやすいと説明されています。SCAの研究解説も、浅めでは果実や花を思わせる方向、深めではチョコレートやほろ苦さを思わせる方向を示しています。

焙煎度が風味へ関係することは、浅・中・深の焙煎、抽出濃度、抽出率を組み合わせ、ドリップコーヒーを官能評価した2020年の査読研究でも確かめられています。一方で、一杯の風味は焙煎度だけで決まりません。豆の産地や品種、精製、鮮度、挽き目、豆量、湯量、抽出も重なるため、表は「あり得る方向」として使います。

表示から読む方向 感じやすい一般傾向 次に試す場面
浅煎り・いまより浅め 明るい酸味、果実や花を思わせる香り いまの豆の苦味やロースト感が強く、軽い方向へ動きたい
中煎り・中深煎り 浅めと深めの間でバランスを探しやすい 好みがまだ言葉にならない、両端へ大きく動かしたくない
深煎り・いまより深め 苦味、香ばしさ、強めのロースト感 いまの豆の酸味を穏やかにし、深い方向へ動きたい

同じ袋でも、酸味を「明るい」と感じる人も「鋭い」と感じる人もいます。苦味も同じです。風味語へ正解を合わせるより、「次もこの方向へ進みたい」「一段戻したい」と判断できれば、焙煎度の表示は十分に役立ちます。

お店が変わったときの「中煎り」の選び方

浅煎り・中煎り・深煎りの呼び方には、お店による違いがあります。SCAの焙煎色研究では、同じ豆を専門家が見ても焙煎度の呼び方が分かれ、ロースターによって「浅煎り」と「深煎り」の位置関係が逆転し得る問題が紹介されています。

測定の研究は進んでいますが、SCAの現行標準一覧で「Coffee Roast Level: Test Method」は、2026年10月6日時点で公開済みではなく開発中です。袋の色名だけを店の外まで持ち出し、「前の店の中煎りと同じ味」とは考えない方が迷いません。

浅め・中間・深めの風味の方向と店ごとにずれる表示境界を示し、同じ店で今の豆から一段だけ比べる手順を伝える模式図
焙煎度は風味の方向を読む手がかり。分類の境界は店ごとに動くため、同じ店の中で一段ずつ比べます。

新しい店で選ぶときは、「中煎りはありますか」だけで終えず、次の二つを添えます。

  • いま飲んでいる豆の店名・商品名・焙煎度
  • 次は酸味を穏やかにしたいのか、苦味やロースト感を軽くしたいのか

店の分類が四段階や八段階でも、こちらが伝えるのは一段分の方向です。店員に現在の袋を見せられれば、その店の「中間」がどこかを推測する負担も減ります。

いまの一袋から、一段だけ動かしてみましょう

最初に、いま飲んでいる袋の焙煎度表示を確認します。表示がなければ、買った店で焙煎度を尋ねるか、次の一袋をその店の中間として基準にします。そこから一度に動かすのは一段だけです。

  1. いまの一杯で、残したいところと変えたいところを一つずつ書く
  2. 酸味を穏やかにしたいなら一段深め、苦味やロースト感を軽くしたいなら一段浅めを選ぶ
  3. 大きく変えたくない、または好みがまだ分からないなら、中間か同じ焙煎度を選ぶ
  4. できれば同じ店・同じ系列で、少量の袋を買う

産地や精製まで同じ豆を焙煎違いで買えるなら、焙煎度を比べやすい組み合わせです。見つからなければ、条件を完全に揃えるために探し回る必要はありません。同じ店で一段だけ動かし、袋にある風味説明も一緒に読む。次に戻れる基準を残すことを優先します。

ブラック、ミルク入り、アイスでも、比較のしかたは同じです。いつもミルクを加えるなら、基準の豆にも候補の豆にも同じ量を加えます。アイスなら氷の量も揃えます。どちらの焙煎度が合うかを先に決めず、普段の飲み方で二つを比べ、もう一度飲みたい方を次の基準にしましょう。

比べる日は、豆以外の数字を揃えます

焙煎度を変えた一袋を開けたら、まずは普段と同じ淹れ方で比べます。豆と一緒に挽き目や湯温まで変えると、どの変更が好みに近づけたのか分からなくなります。

揃えるもの 記録の例 揃える理由
豆量と湯量 前回と同じ重さ 濃さの変化を焙煎度の差と取り違えにくくする
挽き目 同じミルの同じ目盛り 湯の通り方を大きく変えない
湯温と注ぎ方 同じ測定時点、同じ回数で注ぐ 抽出条件をできる範囲で戻せるようにする
ミルク・氷 前回と同じ量 普段の飲み方の中で比較する
飲むタイミング 熱いとき、少し冷めたとき 温度による感じ方を焙煎度だけの差にしない

数字の基準がまだなければ、一杯に使う豆量と挽き目の決め方を先に一つ決めます。湯温まで毎回動いているなら、90〜95℃から温度を一つ選ぶ方法も使えます。

一杯目を飲んだら、細かな採点表は要りません。「前の豆」「今回の豆」「次も飲みたい方」の三つを残します。今回が好みに近ければ、次も同じ焙煎度か、その先の一段へ。離れたら前の表示へ戻します。この往復が、自分にとっての浅め・深めを作ります。

次の一袋は、量と相談しやすさで買う

焙煎度の方向が決まったら、店名より先に「少量で試せるか」「いまの豆から一段を相談できるか」を見ます。スーパーなら袋の焙煎度と風味説明を並べて読み、コーヒー店や焙煎店なら現在の袋と変えたい方向を伝えます。通販では焙煎度だけでなく、風味説明と内容量、豆・粉の選択を確かめます。

スーパー・カフェ・専門店・通販でコーヒー豆を買う方法では、少量購入、店頭相談、豆と粉、送料まで含めて購入経路を比べられます。いまの豆と、次に変えたい風味が分かると、お店でも相談しやすくなります。

現在の袋の表示を残しておけば、次に選んだ豆が好みから離れたときも戻れます。明るい風味なら一段浅め、苦味やロースト感なら一段深め、迷うなら中間。いつもの淹れ方で飲み、次も選びたい方を覚えておきましょう。