コーヒー用に水を一本買ってみるなら、まずは採水地の分かる軟水から。サントリー天然水の南アルプスは硬度約30mg/L、い・ろ・は・すの白州は27mg/L。低い硬度の水を試したいときの、身近な候補です。
いつもの水道水でおいしく飲めているなら、そのままでも大丈夫。水のにおいが気になるときは手持ちの浄水器を使い、水を替えると味がどう変わるか知りたいときは軟水を一本、という順番で考えると買い足しすぎずに済みます。
全日本コーヒー協会も、塩素などを理由に浄水器を通した軟水を案内しています。軟水は選び始める手がかり。その先の味を考えるには、硬度のほかにも知っておきたいことがあります。
軟水を買うなら、銘柄と採水地をセットで
「サントリー天然水」とだけ覚えていると、別の地域で買ったときに水が変わることがあります。公式FAQに載る硬度を並べると、同じ銘柄にもこのくらい幅があります。
| 採水地 | 硬度(mg/L、いずれも約) |
|---|---|
| 北アルプス | 10 |
| 奥大山 | 20 |
| 南アルプス | 30 |
| 阿蘇 | 80 |
い・ろ・は・すも採水地で異なります。公式の成分表示では、次の値です。表示の確認日は2026年10月17日。手元のボトルを選ぶときは、その採水地も合わせて見てみましょう。
| 採水地 | 硬度(mg/L) |
|---|---|
| 北海道清田 | 31.8 |
| 奥羽山脈 | 27 |
| 砺波 | 27.7 |
| 白州 | 27 |
| 富士山麓 | 41 |
| 大山 | 40.3 |
| 阿蘇 | 71.1 |
| えびの | 33 |
南アルプスの約30と白州の27は、硬度では近い値です。一方、サントリー天然水だけでも約10〜80まで変わります。つまり、銘柄を替えるより、同じ銘柄の採水地が替わる方が硬度の差が大きいこともあるのです。
一本目は手に入りやすい軟水で十分。気に入った水をまた買いたいなら、銘柄に加えて採水地も覚えておくと選びやすくなります。
硬度が低いほど、おいしくなる?
硬度は、主に水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を表します。もう一つ、水が酸を中和する力を表すのが「アルカリ度」。コーヒーの味を考えるときは、この二つを分けると見通しがよくなります。
2026年の研究は、コロンビアのKachaluというコーヒーを使い、超純水にカルシウム、マグネシウム、炭酸水素イオンを加えた水で官能評価を行っています。この実験条件では、硬度だけを変えても明確な風味変化は見られませんでした。一方、炭酸水素イオンを増やすと酸味や果実感が弱まり、焙煎香や苦味が強まる方向に変化しました。
この結果から家庭で役立つのは、「硬度が少し低い水へ替えれば、必ずもっとおいしくなる」とは考えなくてよい、ということです。試験は一つのコーヒーと調製した水によるもので、市販水の順位表ではありません。上の二社の表示にもアルカリ度は載っていないため、硬度の表から同じ味や酸味の強さまでは予測できません。
味を変えたいとき、毎回別の水を買い集めるより、まずは一つの水で豆量と挽き目を整える方が、次の一杯へつなげやすいでしょう。
浄水器で変わるのは、硬度とは限りません
水道水のにおいが気になる場合は、家にある浄水器を使う方法があります。ただ、浄水器を通したらどれも同じ軟水になる、というわけではありません。
たとえば、BRITAのボトル型・カラフェ型で使うMicroDiscは、カルシウムやマグネシウムを残すと案内されています。これはそのろ材の性質で、ほかのBRITA製品や浄水器全般に広げられる説明ではありません。
においのためにろ過するのか、ミネラルの違いを試したいのか。目的を分ければ、すでにある浄水器を生かせる場合と、別の水を試す場合を選びやすくなります。
いつもの一杯と比べるなら
水を替えてみる日は、同じ袋の豆を使い、豆量・挽き目・湯量・湯温をいつものままにします。まず比べたいのは、細かな風味の採点よりも「気になっていたにおいが減ったか」「次もこの水で飲みたいか」です。
違いが分からなければ、いつもの水を続けて構いません。気に入ったら、その採水地の水をもう一度。同じ条件でもう一杯飲んでみると、日常に取り入れたい違いなのかを確かめやすくなります。飲用の可否については、地域や供給元の案内に従ってください。
コーヒーマシンに使う水は?
マシンでは、味とは別に内部へのミネラル付着を考えます。キーコーヒーのilly FAQは、硬水の成分が内部へ付着して機能を低下させるおそれから、水道水または軟水のミネラルウォーターを案内しています。これはillyのカプセルマシン向けの指定です。
マシンを使う方は、その機種の水指定や硬度設定、除石灰の手順を優先してください。手淹れで気に入った水と、機械を長く使うための条件は、分けて選びましょう。
いつもの水が決まったら、次は豆の風味を楽しむ番。コーヒー豆をどこで買うかも、一袋を飲み切れる量から考えると選びやすくなります。